「配偶者の車にGPSを付ければ、浮気の証拠がつかめるのでは」——そう考えて調べている方は少なくありません。実際、ネット上には「夫婦の共有財産である車なら、GPSを付けても違法にならない」という説明が数多く見つかります。
しかし、この説明は法律実務家から明確に否定されています。この記事では、なぜ「共有物ならOK」が誤りなのか、法改正で何が変わったのかを整理します。
結論:「共有物だから合法」とは言えない
弁護士による解説では、「共有物であればGPSを取り付けても問題ない」「夫婦の共有財産ならセーフ」といった言説が、無責任なセールストークとして流布しているものだと指摘されています。
実際の裁判例でも、配偶者の車に無断でGPSを設置した事案について、調査目的自体は正当と認めつつ、GPSという手段には違法性があると判断されたものがあります。「目的が正しければ手段も許される」わけではない、ということです。
2021年の法改正で規制が明確化された
2021年5月に成立し、同年8月26日に施行された改正ストーカー規制法により、規制対象が拡大されました。
具体的には、相手の承諾を得ないでGPS機器等から位置情報を取得する行為、およびGPS機器等を取り付ける行為が、規制対象に追加されています。
それ以前は「車にGPSを付ける行為」自体を直接規制する条文がなく、グレーゾーンとして扱われることもありました。しかし法改正により、この点は明確化されています。
刑事だけでなく、民事のリスクもある
仮に刑事事件として立件されなかったとしても、民法709条の不法行為(プライバシー侵害)として損害賠償を請求される可能性があります。
重要なのは、実施者が配偶者本人であっても、被害者は精神的苦痛に対する慰謝料を請求できるという点です。「夫婦間のことだから」という理由で免責されるわけではありません。
つまり、慰謝料を請求する側だったはずが、逆に請求される立場にもなりうるということです。
そもそもGPSでは「不貞の証拠」にならない
法的リスクを別にしても、実効性の面で大きな問題があります。
慰謝料請求で必要なのは、肉体関係の存在を推認させる客観的な証拠です。GPSで分かるのは「どこにいたか」だけで、そこで誰と何をしていたかは分かりません。
ホテルの駐車場に車があったという記録だけでは、不貞行為の証明としては弱いのが実情です。必要な証拠のレベルについては不倫の慰謝料請求に必要な証拠の記事で詳しく解説しています。
GPSを合法的に使える場面
GPS機器そのものが違法なわけではありません。次のような使い方は問題ありません。
- 自分名義の車の盗難対策——自分の所有物に取り付ける
- 子どもの見守り——保護者として、子どもに説明したうえで持たせる
- 高齢の家族の見守り——本人の同意を得て使用する
- 自分の持ち物の紛失対策——財布やカバンなど
共通しているのは「自分の所有物」または「相手の同意がある」という点です。この線を越えると、法的リスクが生じます。
では、浮気の証拠はどうやって集めるのか
確実な証拠が必要な場合、選択肢は限られます。
自分でできること(合法の範囲)
- 帰宅時間・外泊・出張の記録を日付つきでメモする
- 家計として確認できる範囲のカード明細・レシート
- 公開されているSNSの投稿
これらは証拠そのものにはなりませんが、調査を依頼する際の事前情報として価値があり、結果的に調査費用を下げます。自分でできる範囲の限界は自分で浮気調査をする法的な限界の記事で整理しています。
探偵に依頼する
探偵業の届出をした事務所は、尾行・張り込み・公道上での撮影といった適法な手段で調査を行います。裁判で使える報告書が得られ、違法リスクを自分で負わずに済むのが最大の利点です。
費用の目安は浮気調査の費用相場の記事、依頼の手順は探偵に依頼する流れの記事をご覧ください。
よくある質問
Q. 車の名義が自分なら、GPSを付けても問題ないですか?
A. 名義が自分であっても、主に使用しているのが配偶者で、その位置情報を取得する目的であれば、実質的に相手の位置情報を無承諾で取得していることになります。名義だけで適法性が決まるわけではないため、安全とは言えません。
Q. 探偵はGPSを使わないのですか?
A. 法改正以降、探偵業界でもGPSの取り扱いは慎重になっています。実際、探偵業者がストーカー規制法違反で検挙された事例も報告されています(探偵業界の統計データの記事)。調査手法について事前に説明を求めることをおすすめします。
Q. すでに付けてしまった場合はどうすればいいですか?
A. 速やかに取り外すことをおすすめします。取得した情報を証拠として使うことも避けるべきです。今後の対応については弁護士に相談してください。
まとめ
「共有物ならGPSを付けても違法にならない」という説明は、法律実務家から否定されています。2021年の法改正で規制が明確化され、民事上のプライバシー侵害リスクも残ります。
そのうえGPSで分かるのは位置情報だけで、不貞行為の証明としては弱いのが実情です。リスクを負って得られるものが少ない、というのが正確な評価になります。
確実な証拠が必要なら、適法な手段で調査できる専門家に相談するのが結果的に近道です。
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